「絶滅できない動物たち」という動物たちにとってのディストピアを描いたノンフィクション本が話題に「いっそ絶滅させてやってあげてもいいんじゃないか」「痛々しいほど懸命な人間に刺さる本」

絶滅できない動物たち_本

絶滅できない動物たちってどんな本?

絶滅できない動物たち

⇒厳重に「保護」された滅菌室にしか存在しない、
絶滅寸前のカエル。
⇒周囲を軍隊に警備されて繁殖を強いられた、
地球上に2頭しかいないキタシロサイ。
⇒50億羽を200年足らずで絶滅させた張本人に
DNAから「復元」されつつあるリョコウバト。

痛々しいほどに懸命な人間と、
隔離された哀れな動物を前に、ふとよぎる禁断の疑問。
「いっそ、絶滅してしまったほうが――」
人が介入すればするほど、「自然」から遠ざかっていく。
答えのない循環論法に陥った
自然保護/「種の再生」テクノロジーの現場に迫る。

コロンビア大学が生んだ新進気鋭のジャーナリスト、この世の矛盾を暴く!

全米で数々の賞を獲得した傑作ノンフィクション、いよいよ日本上陸!絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ (日本語) 単行本 – 2018/9/27

この本を読んだ方々のレビュー

果たして我々は何を保護したいのか

「絶滅できない」というタイトルはなかなかぎょっとするものだが、本書は「絶滅からの種の保護」を巡るジレンマを、様々な個別事例に寄り添いながら見せてくれる本である。
著者はもともと自然保護に熱心な人だったが、その実態を見ていく過程で「種の保護」が思ったほど単純な問題ではない、と気づいていったという。

最初に取り上げられているのは、キハンシヒキガエルというカエルである。
これはタンザニアのダム建設現場で発見された種で、ダムは極めて環境に配慮されているとの評価であったが、しかしその野生種は絶滅し、もはや実験室でのみ生存している。
このカエルを野生に返すプロジェクトは進められているが、幸先は思わしくない。
そもそも実験室環境に完全に適応してしまったカエルを、再び(もはやカエルたちにとっては自然でない)自然環境に返さねばならないのか、という大いなる問題もある。
そして、電力供給がきちんとなされておらず、毎日停電で社会が停滞・混乱し、多くの人が困窮して死んでいるタンザニアで、小さな両生類保護のために莫大な金をかけることの妥当性もまた問われている。

続いての例はフロリダパンサーである。
個体群が小さくなり孤立したフロリダパンサーは、潜伏睾丸や精子劣化などの問題を抱えており、繁殖が難しい状況にある。
そこで取られているのが、別のピューマと交雑させることで遺伝子の多様性を回復させ、生殖能力を向上させるという方法である。
これはソウゲンライチョウなどでも用いられた方法だが、交雑した種は保護に値するのか、という問題も引き起こしている。
遺伝子レベルで考えると生じる混乱は、隔離したらわずか30年で別の特別個体群へと進化を遂げてしまったホワイトサンズ・パプフィッシュなどを考えるとさらに難しくなる。
急激な進化は、ジャデマ・ハエマトロマ、ウツボカズラの休眠、タイヘイヨウサケ、カダヤシ、ヒマワリなどでもみられるという。

タイセイヨウセミクジラは、遺伝的多様性がほとんどなく、人類の捕鯨でボトルネックを経たのだと考えられてきた。
ところが、骨などの研究により、少なくとも過去400年にわたって遺伝的多様性はほとんどなく、気候変動で繰り返し数百頭の極めて小さな個体群に落ちていたのではないかとされている。
ツコツコやアムステルダムアホウドリ・ワタリアホウドリなど、非常に低い遺伝的多様性や個体数で数千年から数十万年生き延びてきた種もおり、そうした生物は近親交配を巧みに避けることで、遺伝的多様性は低くともやってこれたと考えられている。
そうするともはや人間は何をすべきなのかという問題が再び頭をもたげる。

後半では、絶滅動物の「復活」の話が取り上げられている。
アメリカ自然史博物館の地下にある冷凍コレクション、iPS細胞によるキタシロサイの復活計画、そしてさらには、リョコウバトやネアンデルタール人といった絶滅した種の復活さえ俎上に挙がっている。
しかし、そもそも環境から隔離され、遺伝子だけの意味で同じ存在は、果たして「同じ種」なのか。
そしてそもそも我々は一体何を守りたいのか。
本書で繰り返されている問いは、遺伝子技術の発達によりこのような鮮烈な場にまで広がっている。

「種の多様性保護」の実態を見つめつつ、本当は何をしたかったのだろうか、と考えさせてくれる良書である。
実際、個体ではなく種を保護する、ということの意味は非常に悩ましいものだと感じさせられる。
自然保護や絶滅危惧種の保護に関心のある人は、是非読んでみてほしい一冊である。

知らなかった現実

科学が苦手な人でも読めると思います。

絶滅が危惧された生物、そこには人間が関係しいる。経済の追求、狩猟や薬用のために絶滅寸前である。

これは人間が解決すべき問題だとは思う。保全のため遺伝や生態系という課題と闘う人々、そして矛盾。

人間のエゴが垣間見られるだけでは無かった

原著のタイトルは「Resurrection Science: Conservation, De-Extinction and the Precarious Future of Wild Things」となっており「復活の科学:野生動物の保存,脱絶滅.不安な未来」といったところでしょうか.邦題もそのようなタイトルの方がしっくりきますが,インパクト重視でこのようなタイトルになったんだと思います.

絶滅が危惧される動植物に対する人のエゴを垣間見たくてこの本を手に取りましたが,この本で得られたものはそれだけではありませんでした.
本書で取り上げられる絶滅.あるいは絶滅を危惧追い込まれた8種の生命体について,その周辺を取り巻く自然環境,政治,経済,最新のテクノロジー,哲学,倫理などがいかに複雑に入り混じっているのかを知ることができます.

筆者は脱絶滅のような自然に対する過度な干渉に疑問を抱いていて,その根底には自然や種に対する倫理観や哲学の問題が深く根ざしているんだと教えてくれます.

そしてこれらの話はいずれも事実,しかもここ最近の数年の話だと思うと,自分はまだまだ知らないことが山ほどあって,その道に触れる瞬間が楽しいなあと再認識させてくれます.レビュー

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