SF作家山本弘さん、脳梗塞を告白「これは “ハードSF作家・山本弘” の遺書だと考えてください。」

山本弘

多くの方がすでにご存じでしょうが、僕は二年前に脳梗塞を患いました。本当に突然の発病でした。現在、いくらかは回復してはいますが、依然として計算能力や論理的思考力は低いままです。

今の僕の状態をSFの登場人物に例えるなら、ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』の主人公チャーリイ・ゴードンでしょうか。それもラスト近く、知能が本来の自分に戻ったチャーリイに。

本当に単純な二桁の足し算すらできないんです。

でも、記憶だけは元のまんまなんですよ。たとえばこの『プロジェクトぴあの』を書いた日のことは鮮明に覚えています。

僕は昔からマレイ・ラインスターの大ファンなもので、天才発明家が発明した技術のおかげで世界に大規模な変化が起きるという話にしたかったんです。もちろん嘘八百の架空の技術ですよ。ラインスターという人、こういう架空の技術を思いつくのがすごく上手い。特にお気に入りは中篇「宇宙震」で、時間の流れをコントロールする〈拡時界装置〉が、反動無しで宇宙船を推進するなんてくだりにはしびれました。

僕がラインスターを好きなのは、ものすごい屁理屈をきかせた架空理論で読者を煙にまき、不可能を可能にしてしまうところです。それは科学的正確にこだわる現代のSFが忘れてしまったものではないでしょうか。

 でも、今の僕はこういうものを書けません。
リハビリを受けてもいっこうに良くなる気配はなく、二桁の足し算すらろくにできない。『プロジェクトぴあの』のような高度な数学を駆使する作品は二度と書けないのです。

 だからこれは「ハードSF作家・山本弘」の遺書だと考えてください。これからも小説を書くことはあるかもしれませんが、ハードSFを書くことは永遠に不可能なのです。

はちま起稿

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